渡せなかったラブレター
「何するんよ」と
ゆう間も与えず
その手袋を
あたしの右手に
持たせた

そして
自分も手袋を取った


「この方があったかいやろ?」


ぎゅっと繋いだ手は
驚くほどあたたかくて
優しい気持ちが
体中に流れるように
行き渡っていった


「あったかいな」


笑いかけたあたしに
章弘が不器用に
笑い返す


章弘の左手には
右手の手袋

あたしの右手には
左手の手袋

そして

章弘の右手には
あたしの左手

あたしの左手には
章弘の右手


きっとあの時
二人の気持ちは
一つだった

絶対に
絶対に
そうだったんだ

もしも今
あの瞬間に戻れるなら
「大好き」と
言っているに違いない

もしも
そう言っていたら
「俺も好き」と
言ってくれたに違いない


そう思えば思うほど
あたしは今
終わることのない
後悔の渦に
飲み込まれる

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