渡せなかったラブレター
中学2年生にもなれば
そんな子は
きっと
何人もいたんだろう
きっと
珍しくもなかっただろう


だけど


ウワサの一部が
本当だったと分かって
章弘を
疑おうとする自分が
少しずつ
少しずつ
音も立てずに
忍び寄ってくる感じがした


それが無性に
嫌だった


少し
道に迷ってるだけだよ

きっと
一人じゃ戻れなくて
苦しんでるんだよ


いい風に
解釈し過ぎだってことは
分かっていた


でも
そうでもしなければ
あのタバコのにおいが
あたしから抜けなくて

優しい穏やかな章弘と
荒れ狂う章弘が
交互に現れては
また消えて

あたしの心を
ぐらぐらさせるばかりだった



章弘


それ以上



向こうに行っちゃダメ



ダメだよ…



聞こえなければ
意味がないのに

伝えなければ
意味がないのに


あたしはそう
小さくつぶやくしかなかった









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