渡せなかったラブレター
無常な時間
次の日

目が覚めると
夢から醒めたように
いつもどおりの朝だった

ベッドの上で
白い天井を
ただぼーっと
見つめていた


でも


ほんとは
そこにはいない
章弘を見つめていた


昨日のことは
夢だったんじゃないか
とゆう錯覚が
まだ半分眠っている
あたしの体を
徐々に
起こしていった


ちゃんと思い出せば
背中に
あったかいぬくもりを
感じることができた

ちゃんと思い出せば
そこに
優しい顔の章弘を
見つけることができた


あれは
奇跡でも
夢でもない


そして


あの腕に包まれた時
感じたもう一つの
記憶


章弘のにおい


それは
紛れもなく
タバコのにおいだった



ほんとだったんだね



章弘が
タバコを吸っている

これも
錯覚ではなく
夢でもない
事実だった



< 38 / 65 >

この作品をシェア

pagetop