空を祈る紙ヒコーキ

「もちろん今でも悩みはあるし、ダメな部分はたくさんあります。ネガティブな性格も簡単には変わりません。数学の成績悪くなったな〜とかもっと背が伸びてほしいな〜とか。自分のひねくれ加減にヘコむこともしょっちゅうだし、コンビニで横入りしてくるおじさんの頭に手刀を振り下ろしたくなったりもします」

 会場から笑い声がした。よかった、ウケて。こういう軽快トークみたいなことも苦手だけどテレビ出演の都合上拒否はできなかったので歌と同じだけ練習した。頑張ってよかった。

「そんなダメな私を空と愛大は受け止め、全身で応えてくれました。気持ちをぶつけてくれました。だから今度は私が二人の力になりたい」

 今日が宝来君の命日であることや、彼に贈る曲を最初に歌うことを告げ、私は深呼吸した。すぐに愛大のキーボードが鳴り、空のギターとハーモニーを奏でた。

「聴いて下さい。『空を祈る紙ヒコーキ』」

《空へ向け今日も紙ヒコーキを飛ばした
二度と届かない声だけど 届くと信じ 今日も空を見る

間違えてばかり 後悔してばかりの日々
僕達はどこを目指して歩いてるのだろう
法律やルールは覚えきれないほどたくさんあるのに
そのどれもが受け皿になってはくれなくて
行き先の見えない迷路の中に閉じ込められている

この先もきっと欠けていく
僕達をとりまく世界は 視界を染める景色は これからもずっと変わらないだろう
それでも僕達はひとつ 離れていてもそばに 心は共に
こんな気持ちを持てた瞬間のことを忘れてしまわないよう
紙ヒコーキに祈るよ 空へ

人は間違う つらく当たってしまう日もある 涙に濡れることも
そんな自分を 弱いところを 愛せるように 赦せるように
失った大切なもの これから出会う大切なもの
全てを抱きしめ歩いていく

二度と届かない声だけど 飛べると信じ 今日も空を見る
ありのままの君で生き続けて
欠けた君ごと大好きだよ》









空を祈る紙ヒコーキ(終)

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