空を祈る紙ヒコーキ

 大切なものひとつ守れない俺にはそんなものを持つ資格はない。もう二度とそんなものは作らない。うっかり作ってしまわないようにしよう。強くそう決めた。

 相手を傷つけないために。

 自分が傷つかないために。

 世界からこれ以上色を失わないために。

 何にもこだわらず、愛着も持たず、淡々と生きよう、これからは。



 今年もまた、息苦しい夏がやってくるーー。

 月日の流れは遅いようで早く、学校に行ったりクラスの友達と遊んだりギターを覚えたりマンガを読んで描いたりしている間に俺は高校二年になっていた。

 アイツと過ごした日々がだんだん遠くなっていく。

 願っても届かない。分かっていながら、今日もまた河原の階段から紙ヒコーキを飛ばした。ルーズリーフを折って作ったそれは気持ちよく飛んで濁った河川に落ちた。

 夏草の青くさい匂いがする。木々の色は一年で最も鮮やかで綺麗な色をしているのに、それを嬉しく思う心はもう残っていなかった。











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