空を祈る紙ヒコーキ

 何のことだろう?

 芸能人とか声優だと、自分の著書や出演作品を宣伝するためにツイッターを使う。もしかしたらこの子もそういう活動をしてたりするのかもしれない。だったら派手な格好にも納得だ。容姿だけでなく人目を惹きつけるオーラみたいなものが彼女にはある。

 彼女の口から答えが返ってくるのを待っていると担任が入ってきた。若い男の先生だった。

「これから入学式をします。出席番号順に廊下に整列して下さい」

 まだ大学を出たばかりなのかもしれない。若くて容姿の整った担任教師を見て、女子達はあからさまにテンションを上げた。周りの男子達には目も向けず先生かっこいいと騒ぐ。

 バカみたい。担任じゃん。冷めた気持ちで私は彼女達を眺めた。

「廊下行こ」

 派手な彼女が私を促したことで冷めた気持ちは一時切断された。ツイッターでの友達作りに難色を示していた人がそうやって声をかけてくるのも意外だった。でも、この子のおかげで一人になる心配はなさそう。私は愛想よく返事をした。

「うん」

「名前まだ聞いてなかったよね。アタシは対馬愛大(つしま・まひろ)。愛大でいーよ」

「たか……。夏原涼」

 『高取』と言いかけとっさに訂正した。まだ夏原の実感が湧かない。……そっか。親が再婚するってこういうことなんだ、と、内心深く動揺した。

「涼かぁ。可愛い名前だね。よろしく!」

「こっちこそよろしくね」

 愛大の人懐っこい口調が、変化した名字を口にしたことへの動揺を紛らわせた。

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