空を祈る紙ヒコーキ

 まだ話し続けそうだと思ったのに、案外すんなり愛大は別れの言葉を口にした。

「また明日。バイバイ、涼」

「バイバイ」

 引き止める理由なんてなく、愛大の真似をして愛想よく手を振ってみたものの、まだしゃべっていたかったと思った。

 中学の頃は、こういう友達付き合い(といっても友達はアミルしかいなかったけど)が面倒に感じてサッサと帰りたいとばかり思っていたのに、愛大に対してはそんな気持ちにならなかった。

 そんな風に感じた自分にビックリだし、この感覚を最近も味わったことを思い出した。空と話していた時だ。愛大と空はどことなく似ている。明るい一方踏み込んで来すぎないところとか。愛大と気楽に話せたのは空としゃべり慣れていたおかげかもしれない。

 最初は派手という印象しか持てなかったけど、少し話してみると愛大の可愛さに気付いた。メイクを濃いめにしているのかと思ったけどそうじゃない。元がいいからナチュラルメイクでも目鼻立がくっきりして見えるタイプ。

 特に外見的特徴のない私にはこういう想像しかできないけど、愛大はきっとあの容姿ゆえに自信を持ち、それをいい意味で生かし周りにエネルギーを与えることができる子なんだと思う。変にひねくれたところがないのも、初対面の人と物怖じせず話せるのも、彼女に自信があるから。

 話し上手で顔が広そうという点はアミルと同じだけど、愛大とアミルは全然違う。少し話しただけで充分それが分かった。

 憂鬱でしかなかった高校生活がまた少し楽しみになった。愛大と話し終えた今でも胸の中がわずかにあたたかい。こういう感覚を女子相手に抱ける日が来るなんて夢にも思わなかった。

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