空を祈る紙ヒコーキ


 私が初めて空(そら)に出会ったのは中学最後の夏休み。

 どこまでも澄んだ青空や夏の景色などには見向きもせず、外に比べるとやや薄暗いネットカフェの個室で一人パソコンに向き合っている時だった。



 後ろにドアがある一人用の個室。パソコンから学校裏サイトにアクセスし書き込みをしていると、突然背後のドアが開いた。遠慮のない開け方にイラッとした。

 開けてきたのは少し年上の男だった。爽やかな顔で背も高くて凛々しい雰囲気。なのにどこか影のある、学校にいたらモテそうなタイプだった。

 こういう男は何の苦労もなく学校生活に溶け込みバカみたいに笑って過ごしてるんだろうなと、瞬時に思った。

 男は物怖じする様子もなく私が使っているパソコンの画面を覗き込んだ。自分の席と間違えて別の部屋のドアを開ける客はたまにいるけど、この男はそういうのとも少し違っていた。

 たしかに最初は席を間違えただけなのかもしれない。パソコンを見て彼はジッと動かなくなった。

 何こいつ。早く出て行けよ。

「何ですか?」

 立ち上がり、私はパソコンの画面を背中に隠した。狭い室内で男との距離が近すぎて気分的に息苦しくなる。

 この頃、ストレス発散のため学校裏サイトの掲示板に人の悪口を書くのが習慣になっていた。外見のことだったり普段の仕草をからかう内容だったり、書くことは色々。学校生活を送っていれば人の悪口ネタは無意識のうちにたくさん浮かんだ。

 悪いことをしている自覚はある。だけどいつしかやめられなくなっていた。自分以外の誰かが傷つくところを見るのは快感だし、楽しくて仕方なかった。胸がスッとする。

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