愛するほどに狂おしく
ほんとはほんとは…。

待ちに待った土曜日。
「ただいまー」。
黒く焼けた誠が帰ってきた。
出迎えのごはんを豪勢にしようと張り切りすぎて予定の時刻を超過した私が、ダイニングでエプロンを脱ぐか一目散に玄関に駆けるかあたふたしていると、その足音は近づいてくる。
そう、この音、このリズム。
気づくとエプロンを脱ごうとしたままの中途半端な私を誠がすっぽり包んでいた。
「誠……」
「ただいま、優里。元気してたか?いつも淋しい思いばっかりさせてごめんな?」
ううんと首を振り、おかえりと返す私の目からは勝手に涙が溢れていた。
もうずっと離れていたのに全身が覚えている感覚。
これを、私は待っていた。
誠はそっと私の涙を拭い、荷物をおろした。
そして言ったのだ。
「やっぱり家はいいなぁ。この窓とカーテンな。そして優里。優里、いつ帰って来ても変わらないから安心するよ。」と。
変わらない?私が?
私、今日のためにオシャレしてるよ。
私、6キロ痩せたよ。
私、先週髪切ったよ。
そして、あなたの弟と…あなたを裏切ってる。
気づいて、気づいてよ。
なんか雰囲気変わったか?って、俺の知らない優里になってないか?って、なんか隠し事してないか?って。
罵倒しても責め立ててもいいから、気づいてよ。
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