愛するほどに狂おしく
愛の温度

夜、久しぶりに感じる誠の体温。
「綺麗だよ、優里。」
その言葉だけで、天にも昇る気分になった。
誠の匂いがする。
誠の瞳の奥を探るように私は見つめ続ける。
誠のとろけそうな笑顔も、この胸も、腕も、シワから筋肉のつき方まで私の求めてたものがそこには全てあった。
なにもかも忘れられるくらいに。
なのに、こうして身体を重ねないとあなたを感じられなくなったのはなぜだろう。
君となら、ごはんを食べるだけでも、ゲーセンで暇つぶしでも、近くに感じるのに、変なの。
元々遠距離恋愛だったから、淋しいのは平気なはずだったのに、結婚という契約を期に安心と同時にやってきたなにかは、私たちの関係を確かに揺るがしていた。
愛しているのに遠くに感じる人と、おままごとみたいな好きだけどいつも近くに感じる人。
私の中で二人は兄弟でこそあれ、交わることはなかった。
このまま、朝が来なければいいのに。
私はそう願いながら、電気が消えた部屋でも寝息を立てる誠を見つめ続けた。
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