左手首に足枷を
1. 公園





「桜散りそう・・・」



春、麗らかな昼下がり。


土曜日の午後、特に用もないまま公園に到着。



一人暮らしをしているアパートの近くにある公園で、錆びたブランコとベンチしかない寂しげな印象。


土曜日、子供はいなくて居るのは私ひとり。


何週間前には満開だった桜も、今日は風が強くて散りつつある。


・・・あぁ、肌寒い。


3月末ということで肌寒くて、まだコートは手放せない。



7年前に買ったこのブラウンのコートも、所々に糸のほつれが見えてもう寿命かなぁ、とか。



明後日の月曜日から新入社員がうちの部署に2人入ってしくるんだっけ、とか。




いつ壊れるか分からない錆びたベンチに腰掛けながら、今後のことを頭に浮かべる。



それと同時に私によく似た母親の顔が浮かぶ。



〝貴女、早く結婚しなさいよ〟



最近、母親と話す内容は結婚のことばかり。



別にしたくない訳じゃない、でもしたい訳でもない。



いつかはしたい、けどきっと今じゃない。



無気力な性格と変に頑固な所があって、最近〝結婚〟自体に夢を持てなくなっている。




まあでも、何だか今は仕事が楽しくて。

私を慕ってくれる後輩が出来て、友達もいて。



だから、母親の結婚コールや孫コールがうるさくて、実家には殆ど帰ってない。






「・・・帰ろ」



〝今後〟を考えて溜息が出た。


取り敢えず、今は仕事を頑張ろう。


滅茶苦茶頑張って、貯金しよう。



・・・そして結婚?







ーー空は夕暮れ



ふと時計を見ると短い針は4時を指している。




お腹空いたなぁ。


作るの面倒だし、今日はコンビニで済まそう。


そして録画してたドラマを見よう。


夕飯食べたら、今日はビールでも飲もうかな?





今夜の事を考えたら平和で、微笑ましくなる。


月曜日からの新入社員のために簡単なマニュアルでも作ってあげよう。




ベンチから立ち上がり、公園の目の前にある馴染みのコンビニに軽やかな足取りで向かった。

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