ephemera
 ゆらゆらと陽炎の立つアスファルトを踏みしめる。
 前方には高い防波堤。

 ふぅ、と息をつき、前に足を進める。

 防波堤にはコの字型の鉄棒が穿たれた階段がある。
 焼けた鉄棒を掴み、防波堤を越えれば、眼前には海が広がるんだ。

 防波堤の上に立つと、ざっと強い風が頬を嬲る。
 砂浜などはなく、波消しのブロックから突堤が突き出している。

 私は突堤にいる人影を認めると、急いで階段を降りた。
 強い日差しに、ゆらゆらと陽炎が揺れている。

 彼の影もゆらゆらと、まるで透明な壁の向こうにいるようだ。

 彼はいつもここで、海を見ている。
 白いシャツと黒いパンツ。

 斜め後ろからの横顔しか知らない。
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