ephemera
「暑いね」

「陰がないから」

 私が話しかければ、彼は答えてくれる。

「いつも何してるの」

「インスピレーションを得てるんだ」

 何をするわけでもなく、ただずっとそこに座っている。

 風の音と、波の音。
 蝉の声に、遠く汽笛が響く。

 ゆらゆらと立つ陽炎に、海と陸との境界線も溶けて行く。

「ずっとここにいるの」

 強い日差しが降り注ぐ突堤に、彼は置物のように座っている。
 白いシャツが、風が吹くたび、ばさばさと揺れる。

 斜め後ろから見える口角が、少しだけ上がった。
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