夜明け前に灯を
もう逃げない

明から紡がれる言葉は、初めて聞くことばかりでおとぎ話みたいにも、それでいて音楽みたいにも聞こえた。
「だからね、今でも私は……」
「待って!」
今さらだけど、今こそ男気見せろ自分。
今まで陽の目を見たことなんてないんだから、無駄にするな、当たって砕けろ。
そう言い聞かせた。
「僕、僕はずっと、明のことが好きだったよ。こんな僕じゃ…って思ってたから言えなかっただけで、この名前が自分の中で自慢にすらなったのは、あの卒園式の明の一言なんだ。僕、明が好きだ!だから、大きくなったら僕のお嫁さんになってください。」
明は驚くでもなく、ふふっと笑って、両手を背中で組みながらおどけるようにクルッと回った。
そして、
「うん、なるよ。」
って答えた。
< 8 / 9 >

この作品をシェア

pagetop