愛は尊い


珍しく9時前に帰ってきた操さん
勝田さんも珍しいとつぶやきながらも
操さんを出迎える


「おかえりなさいませ、旦那様」

『おかえりなさい』



「…、勝田、今日はもう上がれ」


わかりましたと、勝田さんは頭をさげる横を操さんは通り過ぎた
なんとなく理解していたが
目の前で見ると、やはり違和感だらけ


お父さんが仕事で帰ってきたら
必ずおかえりなさい、と言っていた
そして、もちろんお父さんも
「ただいま」と言ってくれていた


操さんは私にだけではなく
勝田さんにも言わなかった


『勝田さん…』


言葉を続けようとしたが
それを言わせないようにか


「音様、旦那様の食事の用意をお願いします。私はここで失礼します」


勝田さんはそのままリビングには戻らず
帰ってしまった
なにこれ…と
もう誰もいない玄関に立ち尽くす


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