甘い誘惑
「分かった」

「それじゃあね。
元気でやるのよ」

「うん」

バタン…

あたしは引き止めることもせず、お母さんを見届けた。

涙が出るわけでもなく、そのままその場に立ち尽くす。

あたしは昔から親というものが嫌いだった。

大人の都合で振り回されるのは大嫌いだった。

だから何故かどこかで嬉しい自分がいる。

「ははッ」

笑えてくる。

あたし、捨てられたんだ。

まあ、あんな親いらないけど。

そう思いながらあたしは自分の部屋に戻った。
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