楽園
荒んだ心、求める身体
クルミは昔の華に似ていた。

健太郎はそんなクルミを華の代わりにした。

嫌がるクルミを従わせるのは
華を自分のモノにする気分だった。

嫌がれば嫌がるほど健太郎はその気になった。

全てが終わって荒れた部屋でクルミは起き上がることも出来ず
天井を見上げ泣くのを我慢していた。

健太郎は自分のしたことを最低だと反省し、後悔した。

居たたまれなくなった健太郎は

「悪い、帰るよ。」

と言ってテーブルの上に一万円札を5枚置いた。

クルミは起き上がってそれを健太郎のポケットに捩じ込んだ。

「馬鹿にしないで。
あんな仕事してるからって身体までは売らないから。」

「でも…」

「ただ寝たことにする。」

クルミは半分泣いているような顔でそう言った。

「ごめん。」

健太郎は謝って無理矢理脱がせたクルミの服を拾った。

「ごめん。」

もう一度謝ると健太郎はクルミを抱きしめて泣いた。

自分が情けなくて嫌になった。

こんなときでも華が恋しかった。

あのとき華を引き止めた事を後悔した。

無理に引き離したせいで華はいつまでもあの男を忘れない。

あのとき手放して諦めていれば
あんな華を抱かなくて済んだのに…

それでも健太郎は華を諦められない。

クルミは健太郎にまた同情してしまう。

「大丈夫だから。

何があったかわかんないけど元気だして。

ここに好きなだけ居ていいから。」

そして今度はクルミが泣いてる健太郎を抱きしめた。

健太郎はクルミに何度も謝って部屋を出ていった。

クルミは新たな一歩を踏み出した健太郎の幸せを願って送り出した。


健太郎は華に会わなきゃいけないと思った。

今、華に会わなきゃ自分が壊れてしまうと思った。

深夜、華の居る部屋に帰ると
華は別に責めるワケでもなく

「お帰り。どこ行ってたの?」

と心配そうな顔で聞いた。

「華…やり直そうよ。
俺は華じゃなきゃダメなんだ。」

健太郎はそう言って華を抱きしめる。

華はだまって健太郎の髪を撫でた。

「頼む。もう一度一緒に最初から始めてくれ。

華を愛してるんだ。」

華はそんな健太郎を愛しく思った。

情熱的な愛はなくても健太郎が居ないと寂しかった。

「うん。そうする。」

健太郎が帰ってこない間、華は華なりに健太郎を思っていた。

そして今の華にも健太郎は必要だと思えたのだ。

華はまた翔琉から逃げて
健太郎を選んだ。




その頃翔琉は華のところに行こうとしていた。

そして夏希に別れを切り出した。

「結婚は無かったことにして欲しい。」

夏希は急に心変わりした翔琉に何が起きたのか分からず
その話をどうしても受け入れられなかった。

それからの夏希は泣いたり怒鳴ったり奇行を繰り返し
ショックのあまりバスルームで手首を切った。

幸い発見が早く夏希は一命をとりとめた。

また誰かが自分のせいで命を落とすのは堪えられなかった。

そして翔琉は華を諦め、夏希と結婚をした。



華と翔琉はまた別々の人生を歩むことになった。

それきり翔琉は華の会社の仕事を引き受けなくなった。







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