クールな御曹司と愛され政略結婚
「帰ろ、柘植さんとも、早く話したいし」

「そうか、そうだな」



社長と本格的な親子喧嘩を始めそうになっていた灯が、はっと戻ってくる。

けれど、さっさと立ち上がりかけた私と違い、灯は座ったままで、訝しむ私をよそに、父に向かって「おじさん」と呼びかけた。



「唯は、俺が幸せにするからね」



父の目がまん丸になり、次いで嬉しそうにきらきらする。

灯は耐えきれなくなったのか、片手でもう一方の腕をこするようにして、さっきの勢いはどこへ行ったの、という調子で。



「だから、その、心配しないで」



なんとかそれだけ言うと、声を詰まらせて耳を赤くし、いきなり立ち上がった。



「それだけ。話聞いてくれてありがとう、じゃあ」

「あっ、灯、待ってよ」



私の横を駆け抜けるようにして出ていってしまう。

下足置きで追いつくと、背後から父親たちの、どっと笑う声が聞こえてきた。

灯は上がり框に座り込んで顔を覆っている。



「俺はなにをしに来たんだ…」

「まあまあ、よくできました」



背中に腕を回してなぐさめてあげたら、「お前もなにか言えよ!」と言いがかりをつけられた。



「なにかって?」

「幸せになります、とか」

「だって旦那さまが黙ってろって言うんだもん」



悔しそうなうなり声。

熱い頬に、キスをした。
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