クールな御曹司と愛され政略結婚
会話を遮ったのは、再びの木場くんだ。

私のデスクに手をついて、身を屈めていた灯の、二の腕を指さしている。

灯が自分の腕を見下ろし、不思議そうに言った。



「なんだ?」

「ここ、痣できてます」



言われて見上げてみたら、確かにある。

半袖から出た腕の裏側に、いくつかの青い痣。



「ほんとだ、灯からは見えないかも、けっこうはっきりできてるよ」

「そういえば、さわると痛い」

「両腕ともだね、なんだろ? ちょっと指の痕みたいな感じ…」



言っていて、はっとした。

灯も気がついたらしく、腕をひねってのぞき込んだ姿勢のまま、黙る。



「…木場、試写の準備してこい」

「はいっ」



体よく追い払った後、私たちはお互い、じわじわと赤面した。



「どうするんだよ、これ…」

「ごめん、まさかそんな痕になるなんて…」



一度気づいてしまうと、耐えがたい恥ずかしさらしく、灯が二の腕を手で隠すようにして、赤い顔でじろっと私を見る。

昨日も、半日は自宅で仕事をして、残りの半日はずっとベッドにいた。

明らかにそのときのものだ。



「今日に限って、ジャケット忘れた」

「ええ!」

「なんでこんな変なとこ掴むんだよ」

「だって、力入れやすかったんだもん、そこ」

「背中とか枕とか、ほかにいくらでもあるだろ!」

「灯が、もう嫌だって言ってるのに離してくれないから悪いんじゃない!」
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