クールな御曹司と愛され政略結婚
『説明するから聞いて』

『それより帰れ』

『初めては、好きな人とはしたくないなって思ったの。失敗するのも嫌だし、それが怖くて踏み出せないのも嫌だし。本当に好きな人とする前に、捨てといたほうがいいんだなって思ったの』

『その好きな人ってのは、誰なんだ』

『まだいない』

『できてから言え。じゃあな』



灯は壁のほうを向いて、再び雑誌を読みはじめてしまった。

無視ってことないじゃないか、大事な妹の相談を。

私はベッドに乗り、灯の胸倉をつかむ勢いで揺すった。



『ねえっ、真面目に言ってるんだよ』

『俺にそんなこと、できるわけないだろ!』

『なんで?』

『なんでって…』



繰り返しになるが、この頃の私にとって、灯は絶対的な"お兄ちゃん"だった。

私がお願いすれば、はいはいしょうがないな、と身体を貸してくれるとばかり思っていたのだ。

それは私が幼くて、行為自体の知識がたいしてなかったせいも多分にある。

しかし現実の灯は頑なに拒み、非常識なりに真剣だった私は傷ついた。



『じゃあ、別の相手探してくる』

『待て、ちょっと待て』

『私とじゃする気にならないんでしょ?』

『そういう意味じゃないよ…』



私の傷心が理解できたらしく、灯の拒絶が和らいだ。

身体を起こすと、ベッドの上に座って、私に言い聞かせる。



『唯は妹みたいなもので、大事だから、そんな適当なことできないって意味』

『みたいなものだけど、妹じゃないんだし、別に適当でいいよ』

『俺は嫌なの。お前はわかってないだろうけど、傷つく可能性もあるんだぜ』

『好きな人相手に失敗するほうが、よっぽど傷つくよ! 決めたの、初めては後腐れのない行きずりの人とする。というわけでほかを当たります、じゃあね』

『待て待て待て!』
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