クールな御曹司と愛され政略結婚
『メール見る限りは、向こうは自信ありみたいですけど』

「取り急ぎ、送られてきてるデモムービーを今から全部確認するから。それで可能性がありそうなら、オーディションはGOで」

『了解です、俺も見ますんで、また連絡します』

「今あっちは2時だよね…2時間後には一度話そう」

『はい、あ、灯さんも、ご結婚おめでとうございます!』



返事はなく、気づくと灯がいない。

振り返ったら、ウォークインクローゼットのほうにいた。



『灯さーん?』

「今、服着てる」



Tシャツを取り出してかぶっているところだったので、つい見たままを口にしてしまい、はっとする。

案の定阿部くんは『きゃー!』と変な声を上げた。



『着てなかったんですか!』

「ちが、違うの、シャワーを浴びたところで」

『こんな時間に!? ごちそうさまっす!』

「違うの、あの、三次会が」

『すみませんほんと、新婚初夜を邪魔するとか。まあもうけっこう満たされたでしょ? ちょっといちゃいちゃ封印して、仕事してください』

「違うんだって!」



すでに携帯の画面は、かかった通話時間が表示されているだけになっていた。

これからずっと、こういう目で見られるのかと思うと、いたたまれない。

頭を抱えつつ、LAから送られてきている圧縮ファイルのダウンロードを開始し、24分という半端な所要時間にまたうなった。



そこからはもう、時間との勝負。

送られてきた出演者候補の動画を全部見るには、完全に時間が足りない。



「手分けしよう」

「灯は気になるのを先に見てくれる? 残りを私がつぶしてく」

「オーケー」
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