【短編集】その玉手箱は食べれません


 奇妙な忠告を受けた私はもっと具体的な説明をしてほしかったが、老人はそれから一度も振り返ることなくたんたんとした足取りで駅前の雑踏に紛れて消えた。


 私は画材道具をかき集め、その日の仕事をやめた。


 四畳半一間のアパートに帰り、窓から見える景色を描いてみた。いつの間にか雨雲はなくなっていた。


 アパートの前には子供たちの遊び場となっている小さな公園があった。


 友達と別れるのが辛いのか子供たちはじゃれながら追いかけっこをしている。

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