(仮)センセイに恋の法律相談
2 依頼人は美女
「ただいま」

 買い物を済ませて帰ると、哲さんが事務所のソファで接客中だった。

「あ。お、お帰りアマネ」

 ん?
オカシイ。
“おかえり” の声が、妙に上ずっている。
 違和感を感じた私が依頼者に目を向けると、真っ赤なワンピースに派手なアクセサリ、化粧の濃い若い女。

 視線を察知したのか、彼女もチラリとこちらを見、それからプイッと顔を叛けた。

 ム……

「だからね~、センセ……」
 まるで私なんか見なかったかのように、媚びを含んだ声色で話を続ける。

 私は当然、面白くない。
 
 どーせあの、寂れた繁華街の安っぽいスナックのオネーサンでしょ。ろくな相談でもない癖に。

 何さ、哲さんってば、テレっと鼻の下伸ばしちゃって。

私はまだ、昨日の事を許してないんだから!

ブスッと黙りこみ、これみよがしに2
人の横を通りすぎようとした。

と、すれ違い際、女の香水がツンと鼻を刺激して、思わず話し込む2人を振り返った。

なっ…

うっすらではあるが、彼の左頬にオレンジ色の痕跡がある。

この、この…

ドシドシとこれみよがしに足音を響かせながらすり抜ける。
最後にもう一度振り返り、ギロリと2人を睨み付けた後。

バタンッ。

2階の生活スペースに続くドアを、目一杯乱暴に閉じてやった。
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