(仮)センセイに恋の法律相談
「行くよな?」 

 彼は、哲さんは。
 時々とっても過保護になる。そして、本当にズルい。
 あんなコトされて、雰囲気な眼差しで瞳を覗き込まれるといくらお医者さん嫌いな私でも、絶対に “ノー” とは言えない。

 惚けたように頷くと、彼も『うん』と頷き返し、私の手を、再び階下へ引いていった。

 ドクン、ドクン。

 繋がれた手の先から、火照ってゆく身体に呼応するように指先が疼く___


「7時から城北署で接見が入ってるから。少し遅くなるが…夕飯はそのあと、どこかで食べて帰ろう」
「ん」

 降りながら、これからのオジサンは私にヘルメットを放り投げた。

 久しぶりのタンデム、しかも、まるでデートみたいだ。
 夢心地で彼の説明を聞き流し、私はやっと頷いた。

 さっきからのトキメきの連続で、指先はズキズキ脈打っているが、今の私の頭の中は、そんなことは忘れるくらい脳内麻薬が大量分泌されている。

「しっかり捕まってろ」
 スーツの上からジャケットを羽織り、ゴツい愛車のバックシートをトントン叩く。

 躊躇いながら彼の後ろに跨がって、ぎゅっとお腹に手を回すと、ブウンッとエンジンをうならせ、彼と私を乗せたバイクは発進した。

 
 
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