待ち合わせはあのカフェで
半分このケーキ


スタジオに響く音楽。
ステップを刻むたびに出る音。
目の前の鏡に映るレッスンをしている人の姿。


その中で、夢中になって一番前で踊る俺。


楽しく踊るのが俺のモットー。
踊っている人が楽しんで踊らないと見ている相手を楽しませる事なんて出来ない。
俺がダンスを初めた頃、一番最初に先生から教わった事。

音楽が終わると同時に最後の振り。
静かになったスタジオに、インストラクターの手拍子が響いた。




「今日はここまで!お疲れ様でした!」

「お疲れ様でした」




全員で挨拶とお辞儀をする。
レッスンは終わりだけど、スタジオが閉まるまで自由時間。
インストラクターと話をする人もいれば、自主練習する人もいる。
もちろん、帰る人もいるわけで。

いつもレッスン中気になる所があれば少し自主練習して帰るけど
今日は自主練せずに帰ろう。

スタジオを出て水分補給。
冷たいスポーツドリンクが体中に染み渡る。
汗を拭きながら更衣室に入った。




「珍しい、涼太が自主練しないなんて。なんかあった?」


更衣室のドアが閉まる前に入ってきた陸人。


「特に何も」

「ふーん」




本当に特に何もない。
なのに、全く納得してない様子の陸人。


めんどくせぇ。さっさと着替えて帰ろう。


陸人の存在を一瞬だけ消す。視界からも頭からも。
この更衣室には俺しかいない。

リュックを背負ってロッカーをパタン。と閉じれば、ほぼ同時に陸人が声をあげた。
ビクリと肩がはねた人も居れば、「びっくりした」と声を出す人も居る。
陸人の声は、バカがつく程でかかった。
いつの間にか、更衣室に居る人の数増えてるし。
< 1 / 21 >

この作品をシェア

pagetop