恋愛じかけの業務外取引




私が約3年前まで付き合っていた後輩は、現在物流管理部という本社とは少し離れたところにある部署に勤めている。

簡単に言えば、物流センターの倉庫。

我々バイヤーが国内外から調達した商品は、例外もあるが、いったんこの倉庫に納品されることになっている。

そして倉庫から各店舗へ、ネット販売分は顧客へと発送されるのだ。

堤さんが勤めているイズミ商事のような商社は、リードタイム短縮のため直接店舗へと送ったり届けてくれたりすることもあるが、手続き上、一度この倉庫に入ったことにしてもらう。

その関係で、実は堤さんと私の元カレは、頻繁にやり取りをしていたりする。

だから、もしかしたらいつかこんな事態になるんじゃないかと、思ってはいた。

「というわけで、追加発注分はオリエンタル・オンより直接各店舗に配送します。システム上の手続きは僕の方で責任を持って行いますが、ご確認だけお願いします」

「承知しました。堤さんはいつも段取りが早くて助かります」

「とんでもない。上島(かみしま)さんにはいつもお手数をかけてしまってますから」

今、堤凛太郎がとびきりの爽やか営業スマイルを見せている相手、上島雄二(ゆうじ)こそが、3年前に『期待外れ』とのたまった私の元恋人である。

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