恋愛じかけの業務外取引




私が目を覚ますと、目の前に堤さんの顔があった。

「あ、しまった。起こしちゃった」

「ん……?」

どうやら彼の方が先に起きていたらしい。

寝顔を見られていたことに恥ずかしさを覚えつつ、全身を覆う違和感に気づく。

私、なにも着てない……!

はだけていた胸元に、慌てて掛け布団を押し付ける。

堤さんはそんな私をおかしそうに笑った。

「今さら恥ずかしがらなくていいじゃん」

そういう堤さんはちゃっかり服を身に着けている。

「今さらだから恥ずかしいの」

「夜はあんなに大胆だったのに」

「あああああ……言わないで……!」

今思い出せば、昨夜の私はなんて恥ずかしいことばかりしてしまったのだろう。

ムキになっていたとはいえ、自分から彼を襲ってしまった。

姉御の負けず嫌い根性があんなシチュエーションでも発揮されるとは思わなかった。

「服着る?」

「着る。ていうか、さっき私になにしてたの?」

寝ぼけてはいたが、『起こしちゃった』と言っていたのを、私は覚えている。

起こしてしまうようななにかをしていたはずなのだ。

堤さんはあからさまに後ろめたい顔をした。

「いや、あの。ちょっと、その」

「なにしたの? 寝顔に落書き?」

「いや、まあ近いけど、そうじゃなくて」

「え、うそ。落書きしたの?」

両手で顔に触れる。

手で触った感触では、特に変わった触感はない。

堤さんは叱られるのを覚悟した子供のような顔で白状した。

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