恋愛じかけの業務外取引

その理由に関しては、堤さんもまだ掴めていないという。

ブルーメ側にまたなにか新たな動きがあるらしいのだが、さすがにその内容まではなかなか教えてもらえない。

株式会社ラブグリーンおよび株式会社イズミ商事としては、取扱商品の候補がひとつなくなっただけのこと。

ブルーメとの契約が結べなかったからといって、私たちの評価が大きく下がることもない。

しかし、個人的には強い思い入れがあったから、堤さんに『ブルーメが我々との取引を白紙に戻す可能性が出てきました』と言われたときは、この世の終わりのようにショックだった。

彼が私との関係を保留にしたことより、よっぽど。

現在、ブルーメとの交渉の窓口は堤さんである。

今は彼を信じて待つしかない。

交渉が難航すれば、再びブルーメにうかがうことになるだろう。

「そうか……せっかくいいところまでいってたのにね」

この件を報告すると、斉藤課長も残念そうにため息をついた。

「まだ白紙になると決まったわけではありません。彼を信じます」

そう言い切った私に、課長は顔をほころばせる。

「愛だねぇ」

左胸に印を得た私は、少し照れくさい気持ちで答える。

「はい」

この案件に特別な気持ちがあるのは、私だけじゃない。

この半年、諦めていた私の夢を叶えるために一番頑張ってくれていたのは、堤さんなのだ。

< 156 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop