恋愛じかけの業務外取引

それから半年。

何度も何度も断られて、その度にふたりで新しい提案をした。

直販しかやったことのないブルーメにとって、商社を通して小売店で販売するというルートは、利益率を下げるネガティブな販売方法とみなされている。

私たちは利益をピンハネする悪徳業者とでも思われていただろう。

我々としてもビジネスでやる以上利益をいただかないといけないのだが、決してブルーメの利益を搾取したいわけではない。

ただ、より多くの人に使ってもらいたいのだ。

ラブグリの店頭に並べば、今までブルーメを知らなかったお客さまもきっと興味を持ってくれる。

使っていただければ、きっとこのせっけんのファンになる。

認知度をアップできるというメリットを説き続け、話を聞いてもらえるようになったのは8月の終わり。

それから交渉を続けて、10月の半ばに堤さんとふたりで九州にあるブルーメの会社まで行った。

そこでようやくラブグリでの販売を実現できる、というところまで話が進んだのだ。

あの日は金曜日で翌日が休みだったということもあって、取引成立がほぼ確定したお祝いをしようということになった。

入ったのはたまたま空いていた沖縄料理店。

私はそこで初めて泡盛を飲んで……現在に至る。

しかし、どういうわけか、ブルーメ側が再びラブグリでの販売を渋りはじめたというのだ。

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