恋愛じかけの業務外取引
「しかしっ……!」
諦めず無理にでも別の案を出そうとする堤さんを、私が制止した。
悲痛な表情をこちらに向けた彼に、軽く首を横に振って見せる。
これ以上粘ったって相手を困らせるだけだということは、彼にもわかっていたはずだ。
それでも粘るのは私のためだということを、私はちゃんと理解している。
堤さんは十分にやってくれたし、私はこの結果に納得している。
私はブルーメのふたりに向かって頭を下げた。
「私たちは誠意を持って、十分に議論を尽くしました。結果は非常に残念ですが、おふたりとも、我々の提案をなんとか前向きに捉えようとしてくださいました。ありがとうございます」
堤さんの手が机の下で強く握られている。
彼が奥歯を噛み締めた音が、もしかしたら向かいのふたりにも届いたかもしれない。
「いえ……こちらこそ、ご期待に添えなくて、本当にすみません」
私は頭を上げ、とびきりの笑顔を彼らに向けた。
「では、ちょっとだけ。ビジネスとは違う個人的な話をさせてください」
このせっけんと出会った経緯。
悩んでいた私を救ってくれたことに対する感謝。
そして、今回の件が破談になったことなど気にせず、なにかあったらぜひ私たちを頼ってほしいという意思。
私はラブグリーンのバイヤーとしてではなく、いち消費者としてひとつひとつ、改めて思いの丈を語った。
「私、ブルーメのせっけんが大好きです。御社のますますの発展を、心より願っています」