恋愛じかけの業務外取引




私は3年前まで、社内恋愛をしていた。

相手は私が教育係をしていた後輩で、今は他の部署に異動になってしまっている。

私は昔から姉御キャラで、先輩にかわいがられるというよりは、後輩に慕われるタイプだ。

恋愛においてもそれは同じで、好かれるのはなぜか後輩にばかり。

今までの恋愛経験もほとんどが年下の男性だ。

私を好いてくれた男たちは、どうやら私の姉御感を気に入っていたらしい。

さっぱりとしていて面倒見がよく、自立していて、頑丈。

つまり、手間のかからないところが楽なのだという。

しかし、私も女だ。

私だって男性には甘えたいし、ある程度は頼りたい。

入社以来、男性社員に負けないくらいバリバリ働き、今ではチーフバイヤーにまでなったが、私は別にキャリアウーマンになるつもりはない。

本当はいい人を見つけて、結婚して、子供を産んで、家庭を守る専業主婦になることが夢なのだ。

3年前といえば、私はやっとバイヤーとして大事な仕事を任され始めた頃だった。

やっと仕事に慣れてきたと思ったのに、新たに覚えなければならないことがたくさん発生し、仕事量が1.5倍くらいに増加。

さらに上下両方からかかるプレッシャーや責任の大きさに、潰されてしまいそうだった。

ある日の休日、彼と過ごしていたときのこと。

「あーもう疲れた。もうダメ。仕事なんてやめてしまいたい」

私の吐き出した愚痴に、彼は苦笑いを浮かべた。

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