声にできない“アイシテル”

校舎裏 SIDE:晃

 小山に意味不明な言葉を投げかけられて数日が経つ。


 自分の中で“何か”が起きていることを自覚しつつある。


 もともと、変だなって感じてはいた。

 大野チカという少女に出逢ってから。





 あの子の前だと『冷たい』と言われてきた俺が崩れる。


 あの子がそばに来ても、他の女子と違ってイヤじゃない。

 むしろあの子の姿を見かけると、自分から近づいていくこともある。


 俺の横に小山がいなくてもだ。




 あの子が困っていたら助けてあげたいと思う。

 あの子にはいつも笑っていてほしいと思う。


 これって、妹を思う兄心なんだろうか?

 それとは違う気もするけど・・・。



 告白されたことは数え切れないほどあったけど。


 人を好きになったことはなかったから。

 俺は自分の奥に芽生えている感情を理解できない。



 それでも、無意識にあの子の姿を目で追いかけてしまう。
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