声にできない“アイシテル”
 誰もいない校舎裏についたとたん、乱暴に腕を解かれて私は転んでしまった。


「あらぁ、ごめんなさいね」

 くすくす、くすくす。

 腕をつかんでいた先輩が笑いながら謝る。


 ちっとも気持ちがこもっていない“ごめんなさい”だった。



 よろよろと立ち上がってスカートのほこりを払っていると、髪が長くて背の高い先輩が私の前に立つ。

「あなた、自分が目障りな存在だっていう自覚はないの?」

 体の前で腕を組んでいる先輩。

 私を見下ろす視線はすごく冷たい。




―――目障り?
   どういうこと?


 私にはどうしてこの人たちが怒っているのかが分からない。


 三年の教室がある階には、圭ちゃんに用事がある時しか行かないし。


 用が済んだらすぐに自分の教室に戻るようにしてるし。



 目障りと思われるほどウロウロしてないはず。
 
< 125 / 558 >

この作品をシェア

pagetop