声にできない“アイシテル”
―――謝らなきゃ、謝らなきゃ。


 どうしてそんなに必死に思ったのかは分からない。

 ただ、あの泣きそうにゆがめられた顔が忘れられないのだ。





「なぁ!」

 俺は小山の腕をグッと掴む。


「いてっ。
 痛いって、桜井。
 どうしたんだよ、急に?」


「謝らないといけないんだ!
 あの子が行きそうな所に心当たり、ないか?」


 俺の勢いに飲まれて、目を白黒させている小山。

 何回かまばたきをした後、教えてくれた。

「向かった先はたぶん図書館だと思うよ。
 図書委員をしてるって言ってたから」


「図書館だな?
 サンキュッ」

 俺はカバンを肩に担いで、廊下を走り出した。




 幸い、先生もいない。

 全速力で図書室を目指す。




 相変わらず女子たちはささやいていたけど、そんな事も気にならないほど俺は急いでいた。
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