声にできない“アイシテル”

心の傷

 約3分駆け通して、ようやくたどり着く。


 ゼィ、ハァと肩で息をしていたのを落ち着かせて、扉に手をかけた。


 木製の古い引き戸がガラガラと音を立てる。

 その音に気がついて振り返ったのは、さっきの少女。



 他には誰もいなかった。



 俺はまっすぐにその少女に向かって歩く。

 彼女は突然現れた俺にびっくりして固まっていたけど、顔を見るなり申し訳ない顔つきでぺこぺこ頭を下げ始めた。


「謝らないで。
 文句を言いに来たわけじゃない」
 
 彼女の肩にそっと手を置いて、お辞儀を辞めさせる。

「・・・って言うか、俺のほうが悪いことしたし」


 彼女は俺の言っていることがよく分からないらしく、大きな瞳できょとんと見上げてくる。



「あのさ。
 さっきはひどい事言ってごめん」

 一歩離れて、頭を下げる。


「俺、転校してきたばかりで、君の事知らなくって。
 本当にごめん!!」



 改めて深く頭を下げた。

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