声にできない“アイシテル”
　どれだけ謝れば、この子に償えるだろう。

　一瞬とはいえ、ものすごく傷ついた顔をさせてしまった事が本当に申し訳なくって。


　俺は何度も頭を下げ、ひたすら謝った。





　しばらく経って、彼女は俺の右肩をぽんぽんと軽く叩く。
　
　
　顔を上げると、彼女は静かな笑みを浮かべてゆっくりと首を横に振っている。

　その瞳は、ほんの少しだけ寂しそうだ。



　彼女はスカートのポケットからメモ帳とペンを取り出し、サラサラと何かを書いている。

　そして、そのメモを俺に見せた。


　素直さが表れた綺麗な文字を俺は読み上げる。

「んと。
“事情を知らない人にあんな風に言われるのはよくあることです。
　だから、気にしないでください”」


　読み終えて彼女を見ると、大きくうなずいている。

　再びペンを走らせ、メモを差し出す。



“平気です。
　慣れてますから“





　そこにあったのは短い一文。

　でも、ものすごく胸を締め付ける言葉だった。

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