声にできない“アイシテル”
 ビザにあご先を乗せて、そのままの体勢で身動き一つしない私。


 指一本動かすのですら気だるい。
 
 全身が途方もない脱力感に襲われている。


 目を閉じると余計なことを思い出してしまいそうだから。

 床の一点を見つめたままでいる。









 どの位の間、そのままでいたのか。

 麻痺した感覚では時間の経過が分からない。


 ゆっくりと頭を起こすと、部屋の中はうす暗い。

 時計に目を向けると、喫茶店を出てから2時間が経っていた。




―――ノド、乾いたな・・・。


 お店ではほとんど紅茶が飲めなかった。

 
 取り乱すことないように、気を張ることに必死で。

 紅茶を口にする余裕なんてなかった。 








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