声にできない“アイシテル”
「あ、あのっ。
 チカの留学先は?」

「イギリスって言ってたわ。
 だけど、それ以上は分からないの。
 メモに書かれた連絡先はデタラメだったから」

 
「デタラメ?
 彼女の仕事先の人は何も聞かされてないんですか?!」

「あの子の話だと宿泊先は先輩に紹介してもらったって。
 なのに、職場の人に内緒でキャンセルしたらしいのよ・・・」


「そんなっ・・・?!」

―――それじゃ、手がかりがないじゃないか!! 
 
 俺は言葉を失う。



「だから、桜井君ならあの子の行き先を知っていると思ってたのに。
 そのあなたが何も知らないだなんて・・・」

 お母さんはとうとうその場にへたりこんでしまった。







 急いでお母さんをリビングのソファーへ運ぶ。


「これからチカの職場に出向いて、もう一度詳しく話を聞いてみます」

 お母さんは声もなくうなずくだけ。


「大丈夫ですよ。
 チカは何も言わずにどこかへ行ってしまうような子じゃないです。
 何か行き違いがあったんですよ」


 お母さんに、そして自分に言い聞かせて、彼女の家をあとにした。
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