声にできない“アイシテル”
 この出来事がなんだったのか。

 翌日の放課後、滝沢から聞かされる。



「桜井。
 最近、靴箱にラブレターが入ってないだろ?」

 突然そんな事を言われて、少し驚いた。


 たしかに10月に入ったくらいから、毎日のように靴箱に入っていた手紙やプレゼントが一切ない。

「どうして滝沢が知ってるんだ?」


 すると、彼はこめかみを指でかきながらポツリポツリと話し出した。


「昨日、渡り廊下を通った時、あんまり穏やかじゃない声が聞こえたんだよ」




 滝沢の話はこうだった。



 グランドに面している一階の渡り廊下の反対側は、なにがあるわけでもない。

 だからそこに人がいるはずはない。

 それなのに、数人の話し声がしたので気になり立ち止まった。



 悪いとは思いつつもただならぬ雰囲気なので、そっと気配をうかがう。



 校舎の角の奥のほうに人影が見える。

 イジメやケンカだったら先生を呼ばなくてはと、確認するためにそこに近付いたという。
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