絶叫脱出ゲーム③~クラスカースト~
心臓に響くような声でそう言い、八坂さんの首をきつく締め始めた。


煙の効果はもう切れているはずなのに、その目は血走り獲物を食らうハイエナのようだ。


彩美は石原さんの形相を恐れ、部屋の隅に逃げた。


「もう嫌! もうやめて!!」


八坂さんのうめき声を聞かないように両手で耳を塞ぎ、きつく目を閉じている。


それを見てあたしは気が付いた。


そうか、彩美は<mother>にとって弱い存在なのだ。


クラスカーストの下位ではないが、それと等しい存在。


純粋で穢れを知らない心はもろくて、傷つきやすい。


<mother>はこのバトルで下剋上を狙っているのかもしれない。


例えば、この殺戮もどこかからカメラで撮られていてそれを見ている人たちがいて、その視聴者の見たい物が下剋上だったとすれば……このバトルを開催する意味が成立するんじゃないか?


そう思えていた。


部屋の中で彩美は小刻みに震えていて、その間石原さんは八坂さんにとどめをさしていた。


完全に動かなくなった八坂さんを確認すると、ゆらりと体を揺らすようにして彩美へと向き直った。


目が合った彩美はビクリと体を震わせる。


「あんたは……生きて」


八坂さんは最後にそう言うと、ばったりとその場に倒れてしまったのだった。
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