絶叫脱出ゲーム③~クラスカースト~
「あの状況じゃあたしに声をかけるなんて無理だったと思うから」


そう言い、加奈ちゃんは酒本君へ視線を向けた。


全校生徒の前で中尾君に罵声を浴びせられて酒本君は、すっかり大人しくなってしまっていた。


だけど、酒本君がすぐにあきらめるとは思えない。


酒本君はまだバトルにも呼ばれていないし、うっぷんのすべてをバトルで晴らすつもりなのかもしれない。


そうなれば、酒本君を一番とするクラスカーストはすぐに元の形に戻るだろう。


「……ごめんね」


そう言うと、加奈ちゃんはほほ笑んで左右に首を振った。


「それより、彩美は大丈夫?」


そう聞かれてあたしはハッとして周囲を見回した。


彩美は大人しく座っているが、1人でブツブツと何かを呟いている。


現実から目をそらし、自分の世界を作り上げているようだ。


「彩美、大丈夫?」


肩を揺らしてそう聞くと、彩美はこちらを見てニッコリとほほ笑んだ。


「どうしたの朱里、また課題を忘れたの? 仕方ないなぁ、あたしのを見せてあげるよ」


朱里はそう言い、また周囲を探し始めた。


まるで壊れたブリキのおもちゃみたいだ。
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