絶叫脱出ゲーム③~クラスカースト~
「おい、おっさん! 早く次のバトルをはじめようぜ!!」


すっかり調子に乗っている酒本君が男へ向けてそう声をかけた。


「できればあたしと内田を戦わせてくれない? あたしオタクには負けないから」


名前を呼ばれた内田奈々子がビクリと体を震わせた。


さっきからオタクオタクといじられていた生徒だ。


「対戦相手はこちらで決めさせてもらう」


スーツの男は特に気分を害した様子も浮かべず、義務的にそう返事をした。


「それでは6回目のバトル開始です! 次のバトルは有門加奈VS内田奈々子!」


奈々子ちゃんが男に名前を呼ばれた瞬間、酒本君と公恵は大きな声を上げて笑い出していた。


「ほら、お前呼ばれたぞ!」


「オタク女にバトルなんて無理っしょ!」


「案外強かったりして? ゲームで鍛えてるだろうからさ」


奈々子ちゃんへ向けてのヤジがあちこちから聞こえて来る。


奈々子ちゃんは青ざめた顔で下唇を噛みしめながら、立ち上がった。


「加奈ちゃん、大丈夫?」


あたしは隣に座っていた加奈ちゃんに声をかけた。


加奈ちゃんは泣きそうな顔をしている。
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