CLUSH HONEY~V系彼氏と、蜜より甘く~

-4-

どこからどう話を切り出していいかわからなくて、運ばれてきたコーヒーを一口飲んで、目の前のキリトをじっと盗み見た。


彼は、浅めのシルクハットのような帽子をかぶっていて、

帽子からのぞく少し長めな前髪の陰には、睫毛に縁取られた、あの妖艶な瞳が垣間見えた。


「かっこいいよね…だけど…」


ずっと眺めていたら、思ったことが口をついた。


「かっこいいかどうかとか、興味ない」


コーヒーを飲んで、キリトがさもつまらなさそうに言う。

「でも、バンドでは一番人気でしょう…?」

そう訊くと、


「人気にも、別に興味はない。俺はただ、歌えればいいだけだから…」


と、キリトは答えた。


歌えればいいだけ……って、割とストイックな考えを持ってるんだなと思った。

< 31 / 156 >

この作品をシェア

pagetop