恋の処方箋SOS
01
梅雨明けの病院は意外にも混んでいてどうせ夏風邪だろうとたかをくくっていたらけっきょくこじれてしまった
「高瀬さん診察室にどーぞ」
明るいこえで言われ私は診察室に入る
診察室には若い男性医師がスマホ片手にいて唖然とした
「帰ります」
「座れ」
はい?完全に上から目線に腹が立ち私は振り返った
「あなたになにがわかるんですかって龍太郎?!」
白衣に聴診器をさげた医師は高校の時のクラスメイトの比嘉龍太郎だった
「カルテの名前からおまえかなって思って待っててもらった
んで風邪ひいたのか?」
「こじれると思わなかったもん」
「どーせ腹でも出して寝てたんだろ」
「そんなわけないよ」
久しぶりに見た龍太郎は背丈もなにもかも変わっていた
変わらないのは私だけなんか負けた気分
落胆していると龍太郎が言う
「服脱げ」
「はい?」
「はい?じゃなくて肺な、音きいてその後レントゲンな」ああそうか龍太郎はもうお医者さんなんだった冗談抜きに
私はゆっくりと椅子に座りTシャツをまくりあげた
「早くして恥ずかしいから」
「少し黙ってろよ」
龍太郎の言葉、声質のせいで妙にドキドキする
「はっ恥ずかしい」
冷たい聴診器があたる度に頬が熱くなる
「変わらないな色気がないのは」
「龍太郎」
「だいぶこじらせたろおまえ、レントゲン行ってこい」
「うっうん」
「30になってそのTシャツはないんじゃないか?」
ワゴンセールの物だとはとても言えない
「だって病院行くだけだし」
「とっとと行け」
私は龍太郎に促され診察室を後にした
龍太郎があんなにかっこよくなってたならもっとマシな服装したよ
レントゲンを撮るべくカルテを受け付けに出した
レントゲンを撮り再び診察室のある場所まで戻り待合室の長椅子に腰かけた
「杏子」
急に診察室から名前を呼ばれきはずかしくなる
しかもあんこって
「あんこ、あんこさん」
ぜったいわざとだ、こういうとこは昔と変わらない
私はずかずかと診察室に入っていった
先ほどの診察室には中年医師がお婆さんを診療していた
看護婦さんが慌てて言う
「高瀬さんは五番ですよ」
「えっ…」
私はあまりの恥ずかしさに足早に診察室を出て五番に入った
ベッドに腰かける龍太郎はカルテを訝しげに見つめていた
私そんなに悪いわけ?たかが風邪だよね
「あんこ」
「あんずです」
「おまえまだ誰のもんでもねぇの?」
確かに私には彼氏はいない頷いた


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