恋の処方箋SOS
すっと立ちあがった龍太郎はやっぱり背が高い
「龍太郎、背のびたね」
「変わんねぇよ」
昔のお調子者でクラスの人気者の彼はもういない
「私、用事があるの」
「俺といたくない?なんも聞かないな変わらないなおまえは」
龍太郎はカルテに先生の名前を変更してから手渡した
「そうじゃなくて」
「治っても治らなくても来い」
「だったら龍太郎でいい」
私はカルテをぎゅっと握りしめ勢いよくドアを開けた
がしゃんと言う音と相手の声が重なった
「いったぁい」
見れば車椅子の女性で慌てて謝る
「ごめんなさい」
「気を付けてよねブス」
私はそのまま受け付けに向かった
受け付けで項垂れていると後ろから声がした
「ひどい女」
「えっ…」
「おまえ性格わるくなったな」
龍太郎はこちらを見ずに待合室の長椅子に背を預けたまま話す
「龍太郎が悪いんだから」
「2どめだなそれきいたの」
私は龍太郎と話したことなんてない
「私は知らない」
「俺との記憶は抹消ですかあんこさん」
絶対振り向かせてやる思いで勢いよく白衣を引っ張った
「私は杏子あんこじゃないんだから」
ひらりとかわす龍太郎が恨めしい
「残念、時間ぎれ」
「龍太郎はさ彼女いるの?」
ストレートすぎたかな
龍太郎は一瞬ためらって低く喉で笑った
「ズルい質問するじゃんいたよでも今はいない」
なんで過去形?そっちのがズルいじゃん
「ズルい」
「ずる賢いんだよ俺は、あんここれやるよ」
ぽんぽんと頭を撫でられ最後まで振り返らない龍太郎はすっと棒付きのキャンディを手渡してきた
「私こどもじゃない」
「あんこさんはいつまでも子供ですよ」
私は龍太郎に小さくてを振り会計を済ませ処方箋を受け取り外に出た
自動ドアを潜るとそこは別世界で蝉の声が暑苦しく生温い風が頬を撫でた
スクーターの鍵を差し込み家に戻ると電話が鳴った
「杏子、大丈夫?」
同僚で友達の天然ゆるふわ系な彼女のかわいらしい声が電話口からした
「うん大丈夫だよ美々」
「なら安心した」
えっとこの声は会社1の有力人材のナベさんかな
「ありがとうナベさん」
「ナベさんも来るんだけどこれから女子会なの杏子も来る?」
「シャワー浴びたら行くね」
「じゃあ19時に駅前の居酒屋ヤマネコ亭に集合」
相変わらず美々はかわいいしなにより30の女子に友情は大切だ
家のドアを開けたら母親のうんざりした声を無視してシャワーを浴びた


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