恋の処方箋SOS
「龍太郎」
キスをしてから離れるのと袋が落ちる音がしたのは同時だった
「あっえっとごめん邪魔だったよね内海先生に頼まれたの」
「大丈夫よ龍太郎とはなにもないから」
「キスしてましたよね」
「あらそうかしら」
私は袋を拾って足早に病室を出て自分の病室に戻った
「あいつ」
「勘違いなのにって龍太郎どこ行くのよ」
痛む体を半ばひきずりながら杏子の病室に行った
「それよこせ」
「龍太郎?!」
私より先に袋が気になったのかひったくるように奪う
「うまそ」
「びっくりした」
「俺の飯うばってそれはないじゃん」
「奪ってないって大丈夫?」
キラキラと子供のように笑いながら龍太郎はパンを開けて半分突きだした
「食う?」
「私はさっきお昼食べたし」
「あっそ」
「龍太郎って甘党?」
「まあ」
「突っ立ってないで座りなよ」
「杏子さん」
「いま初めて杏子って呼んだ」
「ああ違うあんこ俺、おまえからまだちゃんと返事きいてないから」
「だから友達からって、焦ることないよね」
「俺さ医者辞めようと思う、別に親が決めたまんま歩いてきてああなんか違うなって思って
俺には2才離れた兄貴がいるんだけど自由なんだよね羨ましいくらい」
「えっ・・・」
「まあ女のおまえに養えなんてバカは言わない、二人で暮らすには充分すぎる金はあるしな」
「龍太郎・・・」
「まあおまえにも悪くない話しだと思うけどな比嘉財閥の嫁になれるんだから」
ちょっと待って龍太郎いまさらっと流したけど財閥って言ったよねお金持ちじゃんセレブじゃん
「・・・ムリ余計に自信ないじゃがいも娘だし」
「じゃがいも?」
「なんでもない」
「ここの病院の資金提供してるのもうちの家だけどな」
「龍太郎ここにいたのね探したのよ」
和服がよく似合ういかにもセレブのような女性
「母さん」
「えっ?!」
「父さんの用事に付き合って来てみればあなたは大怪我で入院中だと聞いていて、なにを食べてるの?」
「別に」
苦笑いを浮かべたまま私をちらりと見た
「えっとはじめまして」
「あらあなたは?ずいぶんみすぼらしいお嬢さんね
龍太郎、あなたは怪我人でしょ早く病室に戻りなさい
あなたには最高級の食事を用意してもらうから」
「いらないんじゃない龍太郎は」
「龍臣」
「よっ龍太郎、しっかし相変わらず母さんには頭が上がらないね、龍臣じゃなくて兄さんと呼べって言ってるのに」
龍太郎にどことなく似ているけどなにかが違う

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