恋の処方箋SOS
08
「しかたないな」
はあとため息をついた内海に俺は言う
「白石のこと」
「おまえは本当に、他人のことなんかいいんだよ自分を心配しろ
薬なんだが無理に飲めないか?」
「吐いて暴れまわるぞ」
「おまえはガキか」
「内海より2つ下だけどな」
「龍太郎、本当に変な気おこすなよ」
「なにが?俺は杏子のこと好きだよ気持ちは変わらない
変えるつもりもないから」
淡々と言い放つ龍太郎にはもうなんの躊躇いもなく俺はポケットに入れっぱなしのぐちゃぐちゃの紙切れをだした
「杏子の部屋から持ってきて言えずにいた」
龍太郎は怒るでもなく軽く茶化した
「まっいいんじゃない、それが杏子の下着なら許さないけど」
「龍太郎?おまえらしくない」
龍太郎の素がどんなのかいまいちつかみきれてないのだ未だに
「腹へったな」
そういえば龍太郎はここ数日ほぼ何も食べてないような気がするし体重も少し落ちたように見える
元よりあんな不摂生な食事ばかりで太らなかったのもすごい気がするが
「売店に行ってくる」
「俺のロッカーにあるカップ麺でいいよ」
「あのなぁ龍太郎、病人にそんなもん食べさせられるわけないだろ
他になにかあるか?」
「別に」
内海がいなくなると入れ替わりに佐和子さんが荷物を抱えて入ってきた
「なんだ起きてたの、鍵置いとくね」
「ああ」
「龍太郎の部屋、本当に必要なもの以外ないんだね
着替えとタオルあと必要なもの入ってるから」
「ありがと佐和子さん」
「やっぱり私じゃなきゃ頼めなかったわけ?」
「自分じゃ持ってこれないし、着替えたいから」
「ああごめん」
私は堪えきれなくなって龍太郎に抱きついた
「佐和子さん?」
「うまくいかないのなにもかも、やっぱり結婚なんてしなきゃよかった
龍太郎の部屋に行って写真を見たら涙が出てきた」
「きっと俺がいま佐和子さんを抱いてもなにも埋まらないよ」
「わかってる、龍太郎には大切な人がいるのも」
俺は佐和子さんにそっとキスをした
恋人同士がする甘いものじゃないキス
「だからって狡いでしょ」
「大人はみんな狡いのよ」
佐和子さんが女豹のように手を這わせてくる
「したいの俺と?」
「龍太郎だってまんざらじゃないくせに」
そっと体を撫でて佐和子さんは赤い唇を舐めた
「やっぱりやめた」
「えっ?」
そっと佐和子さんの頭を撫でてキスをしてから突き放す
「佐和子さん俺としたって変わらないよ自分が傷つくだけ」
龍太郎の言ってることが至極まっとうで私は笑ってしまった
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