恋の処方箋SOS
白石先生の病室の前にいた看護婦さんに話を聞いた
「白石先生は?」
「面会謝絶ですよ」
ため息をつきながら困っていると内海先生が通りかかった
「杏子?」
「白石先生が」
「わかったからおちつけ、おまえ龍太郎が好きなんじゃないのか?
退院手続きが終わったら帰るんだろ普通」
「少しだけ話したくて」
「本当なら義務違反だが」
私は内海先生に礼を言いながら一緒に中に入った
病室は静かで計器の音だけが鳴っていた
私はベッドに近づいてゆっくり話した
「白石先生、私ちゃんと前に進みます」
「まったくあなたはどうして泣いているんです?」
細い指が私の涙を拭っていく
「泣いてないですよ」
「どうして僕は真幌の側にいけないんでしょうね
なにをしても
真幌のいない世界なんて意味がないのに生きていても」
「真幌さんはきっと生きていてほしいんですよ」
「僕にはなにもない、龍太郎先生のように誰からも信頼されることも内海先生のようになんでも治してしまうことも
なのに生きていてもしかたない」
「そんなことない」
「まったくあなたは誰が好きなんですか?
またあなたは自分に嘘をつく
僕が両手を広げてあなたを受け止めるとでも?」
「私は」
「龍太郎先生が好きなら彼の側にいるのが普通でしょうに
龍太郎先生、今がいちばん苦しいんじゃないんですか?
熱だってひいてないんでしょ?」
「・・・」
「杏子?」
私は荷物を持ち直して龍太郎の病室に向かった
龍太郎の病室が騒がしい
イヤな予感がしたが病室前で看護婦に止められた
「龍太郎」
「いま処置中です」
「君が比嘉先生の彼女、かわいいね」
ぽんと頭を撫でられて私は振り切った
「あなたは?」
「比嘉先生の担当医です、中へどうぞ」
私はゆっくりと病室に入って龍太郎の側にあった椅子に座った
「龍太郎は?」
「さあ?彼に生きる気力があればの話しですよ医者は神じゃない
結論から言えば傷が炎症をおこして熱があるし軽い脱水もおこしてた
抗生剤を増やしても龍太郎先生の体が拒絶するんだよ
龍太郎先生の体は薬物に異常に反応する
だから使える薬も量も限られてる本当にギリギリだよ」
私は言葉を失ってしまいなにも返せなかった
「っ・・・杏子?」
龍太郎の声がして私は泣いてしまった
「龍太郎」
すっと伸ばされた骨張った大きな手が私の頬を撫でた
「また泣かせたな何回めだっけ?」
そんなの覚えてない数えてない
「城ヶ崎」
言われるまま城ヶ崎さんが廊下に行くのを見て龍太郎は私を引き寄せた
「龍太郎」
「これずっと渡したかった」
龍太郎が指に嵌めてくれたのはシンプルな指輪
「龍太郎?」
「だから付き合ってほしい」
私はただ優しく微笑んで頷いた
~fin~
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