黒胡椒もお砂糖も


 そして2位は丘坐さんて48歳のこれもエリート営業だ。この人はSは小さいけど契約数が半端ない。15件だって!一体いつ契約書の印刷してるのよ。会社のプリンターでしか出来ないそれをしている姿を全然見かけないけど?ひたすら残業してるのかしら。とにかく細かく契約を積み上げて2位だった。そして3位が―――――――――

 ・・・・高田さん。

 私はその名前をじっと見詰める。

 凄い・・・やっぱり営業として、かなり優秀な人なんだな。解約率も見てみたいな~・・・これで解約ゼロとかだったらマジでぶっとぶ。

 私の思考はふと美形の営業マンへと飛ぶ。

 実は先週一度、エレベーターの中で高田さんと遭遇したのだ。

 いつもは後ろで一つにくくっている髪をロン毛のままにして、エレベーターに飛び込んできた。

 久しぶりに見た彼はいつもの通り静かな表情で、重そうな鞄と紙袋を二つも左手からぶら下げていた。

 どくん、と鼓動が跳ねたのが判った。だけど私はそれを極力無視していた。

 その後にも数人詰め込まれ、やたらと混雑したエレベーターの中、高田さんはいつの間にか私の隣に。

 一度も目も会わなかったし沢山人がいたから、彼は私に気付いてないんだと思っていた。

 混雑したエレベーターの中でわざわざ話しかけたりはしない。だから私からも敢えて挨拶はせず、そのままで黙って立っていたのだ。

 すると、大きな彼の手が、するりと私の手を握った。


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