黒胡椒もお砂糖も


「入社してきた時には倒れないかしらと心配したけど、本当、ふっくらとしてきて元気そうになって嬉しいわ。この調子で今年一年の大繁忙期を期待してるわね」

 ・・・あくまでも、上司は上司なのだな、私は心の中で呟き、へらっと笑ってみせた。


  そんなわけで、2月に入った時には気分的にもの凄く楽で、寒い外に行かずにいかに契約を貰うかの作戦まで練る暇があった。

 この3月には新しい保険が出るので、2月戦をぬって職員には研修が行われる。成績が足りない職員は営業活動時間が削られるので、イライラして出席するハメになる。それにも余裕を持って出席できた私だった。

 よしよし。

 雪は降らないけど底冷えの街をうろつきながら、私はそれなりに機嫌が良かった。


 事務所に戻って来て2月戦の速報を見た時、思わず口笛が出た。

「・・・わお」

 小さく呟く。

 また支社のダントツ一番は平林さんだったけど、内容が凄かった。既に8件、オール主力商品で、S(契約高)が半端ない。

 ・・・何だ、6800万の保険って。金持ちっているところにはいるんだな~・・・これの保険設計書を是非とも見てみたい。年金もつけて、それが360万×20年とかそんなのかな・・・。それとも終身の部分を厚く500万とか?

 速報を見ながらついアレコレ考える。

 他にも経保(経営者保険)が2件。一体どこから見つけてくるのだ。唖然として、口が開きっ放しの私だった。多分、紹介者が数珠繋ぎで広がっていく好景気スパイラルをずっとやっているのだろうけれど。

 そうじゃなきゃ無理だよね。


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